フリーランスエンジニアとして独立を考えているものの、「やめとけ」という声を聞いて迷っている方も多いのではないでしょうか。実際にフリーランスエンジニアには確かにリスクが存在しますが、同時に会社員では得られないメリットもあります。
この記事では、フリーランスエンジニアがやめとけと言われる具体的な理由から、実際のメリット、成功するために必要なスキルまで詳しく解説します。独立を検討している方が現実的な判断ができるよう、両面から情報をお伝えしていきます。
フリーランスエンジニアがやめとけと言われる理由
フリーランスエンジニアに対する否定的な意見には、実際の経験に基づいた根拠があります。独立前に知っておくべき主要なリスクを見ていきましょう。
1. 収入が不安定になりやすい
会社員と異なり、フリーランスエンジニアは毎月決まった給料が保証されていません。案件が途切れれば収入はゼロになり、病気やケガで働けない期間も収入が止まってしまいます。
特に駆け出しの頃は案件獲得に苦労することが多く、想定していた収入を下回るケースも珍しくありません。また、クライアントの都合による急な案件中止や支払い遅延なども発生する可能性があります。
安定した収入を重視する方にとって、この不安定さは大きなストレス要因となるでしょう。
2. 福利厚生がなく社会保障が不安
会社員が当たり前に受けている福利厚生は、フリーランスには一切ありません。健康保険は国民健康保険に加入し、年金も国民年金のみとなります。
- 退職金制度なし
- 有給休暇なし
- 傷病手当金なし
- 労災保険なし
- 失業保険なし
将来の年金受給額も会社員時代より大幅に減る可能性が高く、老後の生活設計に不安を感じる方も多いです。
3. 営業活動が自己責任で難しい
技術力があっても、案件を獲得できなければ収入にはつながりません。フリーランスエンジニアは自分で営業活動を行い、継続的に仕事を確保する必要があります。
営業が苦手なエンジニアにとって、これは非常に高いハードルです。技術的なスキルと営業スキルは全く別物のため、優秀なエンジニアでも案件獲得に苦労するケースがあります。
また、既存案件の対応に追われて営業活動がおろそかになり、案件が終了してから次の仕事探しを始めて収入が途切れるパターンも見られます。
4. スキルアップの機会が限られる
会社員であれば研修制度や勉強会、先輩からの指導などでスキルアップの機会が用意されています。しかし、フリーランスは基本的に一人で作業するため、技術的な成長機会が限定的です。
新しい技術を学ぶ時間も自分で確保する必要があり、学習コストも全て自己負担となります。案件に追われて勉強時間が取れず、技術の進歩に取り残されるリスクもあります。
5. 社会的信用が低くなる
フリーランスは収入が不安定とみなされるため、社会的な信用度が会社員より低くなりがちです。住宅ローンやクレジットカードの審査が厳しくなり、賃貸物件の契約でも苦労する場合があります。
特に家族がいる場合、配偶者や両親から理解を得るのが難しいケースもあり、人間関係に影響を与える可能性もあります。
6. 年齢による影響を受けやすい
IT業界では35歳限界説がよく言われますが、フリーランスエンジニアは会社員以上に年齢の影響を受けやすい傾向があります。若い頃は体力勝負で長時間労働も可能ですが、年齢を重ねるにつれて難しくなります。
また、新しい技術への適応力や学習意欲も重要な評価ポイントとなるため、継続的な自己投資が欠かせません。
7. セルフブラック状態に陥りやすい
フリーランスには労働基準法が適用されないため、働き方の制限がありません。収入を増やそうとして長時間労働を続けたり、休日返上で作業したりして、結果的に会社員時代より過酷な労働環境になってしまうケースがあります。
自分で労働時間をコントロールする自制心がないと、健康を害するリスクも高まります。
フリーランスエンジニアのメリットとは
やめとけと言われる理由がある一方で、フリーランスエンジニアには会社員では得られない魅力的なメリットも存在します。これらのメリットを理解した上で、自分に合った働き方を検討してみましょう。
会社員よりも収入アップしやすい
スキルと営業力があれば、会社員時代を大きく上回る収入を得ることが可能です。会社員の場合、どれだけ成果を上げても給与の上昇幅には限界がありますが、フリーランスは成果が直接報酬に反映されます。
エンジニア向けのフリーランス案件では、月額60万円〜100万円以上の高単価案件も珍しくありません。年収1000万円を超えるフリーランスエンジニアも実際に存在しており、スキル次第では大幅な収入アップが期待できます。
また、複数の案件を同時進行することで、さらなる収入増加も可能です。
働く場所と時間を自由に選べる
リモートワークが普及した現在、フリーランスエンジニアは働く場所を自由に選択できます。自宅はもちろん、カフェやコワーキングスペース、地方や海外からでも仕事が可能です。
時間の使い方も自分でコントロールできるため、家族との時間を大切にしたり、趣味に時間を割いたりと、理想的なワークライフバランスを実現できます。
通勤時間がなくなることで、その分を有効活用できるのも大きなメリットです。
携わる案件を自分で決められる
会社員の場合、担当する仕事は上司が決定しますが、フリーランスは自分で案件を選択できます。興味のある技術や業界に特化して仕事を選んだり、スキルアップにつながる案件を積極的に受けたりすることが可能です。
やりたくない仕事を断ることもできるため、モチベーションを維持しながら働けます。キャリアの方向性も自分で決められるのは、大きな魅力といえるでしょう。
人間関係のストレスが軽減される
会社員時代に悩まされがちな上司や同僚との人間関係に縛られることがありません。苦手な人とは最小限の関わりに留めることができ、ストレスの大幅な軽減が期待できます。
会議や飲み会への参加も基本的に不要で、純粋に技術的な仕事に集中できる環境を作れます。
成果が直接報酬に反映される
頑張った分だけ収入に反映されるのは、フリーランスならではのメリットです。会社員の場合、どれだけ成果を上げても給与への反映は限定的ですが、フリーランスは成果と報酬が直結しています。
効率よく作業を進めて早期に納品できれば、実質的な時給は大幅にアップします。自分の努力が目に見える形で返ってくるため、やりがいを感じやすい働き方といえます。
フリーランスエンジニアに求められるスキル
フリーランスとして成功するためには、技術力だけでなく幅広いスキルが必要です。事前に身につけておくべきスキルを確認しておきましょう。
専門的な技術力
最も重要なのは、クライアントから求められる技術的なスキルです。単に技術を知っているだけでなく、実際のプロジェクトで成果を出せるレベルまで習得している必要があります。
需要の高い技術領域に特化することで、より高単価の案件を獲得しやすくなります。現在特に需要が高いのは以下のような技術です。
- クラウド技術(AWS、Azure、GCP)
- AI・機械学習
- モバイルアプリ開発
- フロントエンド開発(React、Vue.js)
- インフラ・DevOps
継続的に技術をアップデートし、市場価値の高いスキルを維持することが重要です。
コミュニケーション能力
クライアントとの円滑なやり取りができるコミュニケーション能力は必須です。技術的な内容を分かりやすく説明したり、要件を正確に理解したりする能力が求められます。
リモートワークが中心となる場合、文字によるコミュニケーションの比重も高くなります。メールやチャットでの適切な文章作成能力も重要なスキルです。
また、問題が発生した際の報告や相談も適切なタイミングで行う必要があり、信頼関係の構築にも大きく影響します。
営業力・提案力
継続的に案件を獲得するためには、営業スキルが欠かせません。自分のスキルや実績を適切にアピールし、クライアントのニーズに合った提案ができる能力が必要です。
単に技術力をアピールするだけでなく、クライアントの課題を理解し、それを解決する具体的な方法を提示できることが重要です。価格交渉や契約条件の調整なども含まれます。
自己管理能力
フリーランスは全ての業務を自分で管理する必要があります。スケジュール管理、品質管理、進捗管理など、プロジェクトマネージャーとしての能力も求められます。
特に複数の案件を同時進行する場合、優先順位の判断や時間配分が重要になります。締切を守り、品質の高い成果物を提供し続けることが信頼につながります。
税務・経理の知識
個人事業主として、確定申告や帳簿管理などの税務・経理業務を行う必要があります。基本的な知識は必須であり、節税対策も収入アップに直結する重要な要素です。
青色申告の活用や必要経費の理解など、最低限の知識は身につけておきましょう。複雑な処理は税理士に依頼することも可能ですが、基本的な仕組みの理解は必要です。
契約に関する知識
業務委託契約書の内容を理解し、適切な契約を締結する能力が必要です。報酬の支払い条件、責任範囲、機密保持など、重要な項目を見落とすとトラブルの原因となります。
契約書のひな形を用意しておいたり、必要に応じて専門家に相談したりする体制を整えておくことが大切です。
フリーランスエンジニアに向いている人の特徴
フリーランスとして成功しやすい人には、共通する特徴があります。自分がフリーランスに向いているかを判断する参考にしてください。
技術力に自信がある人
まず前提として、一定以上の技術力があることが必須です。会社員時代にチームをリードした経験があったり、複数のプロジェクトで成果を上げた実績があったりする人は、フリーランスでも活躍しやすいでしょう。
技術力に加えて、新しい技術を継続的に学習する意欲があることも重要です。IT業界は変化が激しいため、常にアップデートし続ける姿勢が求められます。
自分でスケジュール管理できる人
上司や同僚からの指示がない環境で、自分でタスクを整理し、効率よく作業を進められる人はフリーランスに向いています。自己管理能力が高く、計画的に物事を進められることが成功の鍵となります。
また、モチベーションを自分で維持できることも重要です。誰も監視していない環境でも、責任感を持って作業に取り組める人が適しています。
営業活動を苦痛に感じない人
技術者の中には営業を嫌がる人も多いですが、フリーランスとして成功するためには営業活動が欠かせません。人とのコミュニケーションを楽しめたり、自分の技術力をアピールすることに抵抗がなかったりする人は有利です。
営業スキルは後から身につけることも可能ですが、基本的なコミュニケーション能力や積極性は重要な素質といえます。
リスクを受け入れられる人
収入の不安定さや将来への不安など、フリーランスには様々なリスクが伴います。これらのリスクを理解した上で、それでも挑戦したいという強い意志がある人が向いています。
リスクを恐れすぎてしまう人や、安定性を最重視する人は、フリーランスよりも会社員として働く方が適しているかもしれません。
フリーランスエンジニアになる前に準備すべきこと
独立を成功させるためには、事前の準備が重要です。計画的に準備を進めて、リスクを最小限に抑えましょう。
十分な実務経験を積む
フリーランスとして独立するには、最低でも3〜5年程度の実務経験が必要です。一人でプロジェクトを完結できるレベルの技術力と、トラブル対応能力を身につけておきましょう。
可能であれば、様々な技術や業界での経験を積んでおくと、案件の選択肢が広がります。また、上流工程の経験があると、より高単価の案件を獲得しやすくなります。
人脈を作っておく
案件獲得において、人脈は非常に重要な要素です。会社員時代の同僚や取引先、勉強会やセミナーで知り合った人など、様々な人とのつながりを大切にしておきましょう。
特に、元同僚からの紹介案件は条件が良いことが多く、継続的な仕事につながりやすい傾向があります。SNSや技術ブログなどを通じて、積極的に発信活動を行うのも効果的です。
生活資金を蓄えておく
独立直後は収入が不安定になる可能性があるため、最低でも6ヶ月分、できれば1年分の生活費を蓄えておくことをおすすめします。精神的な余裕があることで、案件選びでも妥協せずに済みます。
また、パソコンやソフトウェアなどの初期投資費用も準備しておく必要があります。
必要な手続きを理解する
個人事業主としての開業届の提出、青色申告の申請、国民健康保険への加入など、独立に伴う各種手続きを事前に調べておきましょう。
税務署での手続きや、市役所での国民年金・国民健康保険の手続きなど、やるべきことは意外と多いです。スムーズに独立できるよう、チェックリストを作成しておくと安心です。
まとめ
フリーランスエンジニアは確かにリスクのある働き方ですが、適切な準備と心構えがあれば、会社員では得られない大きなメリットを享受できます。
重要なのは、やめとけと言われる理由を正しく理解し、それらのリスクに対する対策を講じることです。技術力の向上、営業スキルの習得、資金の準備など、事前にできることはたくさんあります。
独立を検討している方は、まず自分がフリーランスに向いているかを冷静に判断し、十分な準備期間を設けることをおすすめします。安易な独立は失敗のリスクを高めますが、しっかりと準備した上での挑戦は、キャリアアップの大きなチャンスとなるでしょう。